訪問看護制度の概要

平成3年10月に老人保健法の改正により老人訪問看護制度が創設されました。
平成4年4月1日から在宅の寝たきりの高齢者等に対して、「老人訪問看護ステーション」から訪問看護が実施されました。
平成6年10月1日から健康保険法等の改正により、老人医療対象外の在宅難病児者、障害児者などの療養者に対しても、訪問看護ステーションから訪問看護が実施されました。
老人保健法・健康保険法などに基づく訪問看護サービスは、老人医療受給者のみでなく、すべての年齢の在宅療養者に訪問看護が提供できるようになりました。
平成12年4月からは、介護保険法の実施に伴い、在宅の要支援者・要介護者等に認定された人に対して訪問看護が提供されるようになりました。
介護保険からの給付が最優先になりますが、別に厚生労働大臣が定める疾病等は、医療保険における訪問看護の提供を行います。
平成20年4月から、老人保健法による老人医療制度は、「高齢者の医療の確保に関する法律」による後期高齢者医療へ移行となり、老人訪問看護も後期高齢者医療制度へ引き継がれました。

訪問看護は、高齢者のみの訪問しかなかったところからスタートし、法改正や新しい法の制定で、現在のような訪問看護になったということですね。

そもそも訪問看護とは?

訪問看護は、訪問看護師等がご自宅に訪問して療養生活を送っている方の看護を行うサービスのことです。本人や家族の思いに沿った在宅療養生活の実現に向けて、専門性を発揮し、健康の維持・回復等、QOL の向上ができるように、予防から看取りまで支えます。また、訪問看護ステーションでは、24時間の電話相談や必要時には緊急訪問看護を提供できる体制を敷いています。

上記の通り、訪問看護サービスでは、安心して自分らしく在宅療養生活を送ることができるよう、ご本人様のみではなくご家族様も含めて支援を実施いたします。
イメージ的には下記のような構図となります。

訪問看護のサービス内容は?

訪問看護ステーションの職員は、看護職員として保健師、看護師、助産師(医療保険対象者のみ)、准看護師が訪問します。また、訪問看護として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がリハビリテーションを行うこともあります。

訪問看護師は、食事や排泄等のさまざまな療養上の助言を行い、健康状態の安定に努めます。また、バイタルサインをチェックし、心身の健康状態や障がいの状態を観察し、状態に応じた助言や緊急対応、また、予防的支援を行います。

さらに、医療的ケアが必要な重度の方に対しては、主治医と連携を強化し、医療処置や医療機器の管理・指導も行い、最後まで、その人らしく尊厳のある生活を送ることができるように支援します。

つまり訪問看護を実施する者は看護師だけでなく、リハビリも含まれています。サービス内容も利用者様のニーズに合ったサービスを職種と内容を組み合わせて、主治医と連携を取りながら支援いたします。

訪問看護の対象者は?

赤ちゃんからお年寄りまで訪問看護を実施できるが、誰でもサービスを受けられるのか?自分はサービス対象者なのか?という疑問について解説していきます。ざっくり説明すると、介護保険と医療保険のどちらかの保険が適応される方は、訪問看護のサービスを受けることができます。介護保険の訪問看護対象者から順番に詳しく説明していきます。

介護保険の訪問看護対象者

介護保険の訪問看護の対象者は、第1号被保険者と第2号被保険者の人です。
第1号被保険者は、65歳以上の方で、要支援・要介護と認定された人です。また、第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の方で、下記図に示す16特定疾病疾患の対象者で要支援・要介護と認定された人です。介護保険で訪問看護を利用する場合は、本人・家族が、主治医に訪問看護を依頼し、医師が必要であると認めれば、居宅介護支援事業所のケアマネージャー等のケアプランに訪問看護を組み入れてもらいます。その後、依頼を受けた訪問看護ステーションは、主治医から「訪問看護指示書」を受けて、ケアプランに沿った訪問看護計画に基づいて訪問看護を実施します。

つまり、介護保険での対象者は要支援・要介護の認定を受けた者で、主治医が認めた場合に
ケアマネージャーが作成するケアプランに訪問看護を組み込むことができるということです。
これだけでは、赤ちゃんからお年寄りまで訪問看護できるとは言えませんよね。続いて、医療保険での訪問看護の対象者について解説していきます。

医療保険の訪問看護の対象者

医療保険の対象者は、小児から高齢者まで対象ですが、下記の図に示すように、年齢において条件が伴い
ます。特に、項目5の要介護・要支援の認定を受けた方については、本来、介護保険が優先ですが、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や精神科訪問看護が必要な方(認知症は除く)や病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある方は、医療保険で訪問看護が提供されます。したがって、重症心身障害児者等の方は、医療保険で訪問看護の提供を行います。医療保険で訪問看護を利用する場合は、介護保険と同様に、本人・家族が、主治医に訪問看護を依頼し、医師が必要であると認めれば、訪問看護ステーションは、主治医から「訪問看護指示書」を受けて、訪問看護計画に基づいて訪問看護を実施します。

医療保険での対象者は介護保険の対象者ではないことを基本に主治医が必要性を認めた場合に対象者となります。原則、介護保険が優先されるということです。ただ、項目5の方のように介護保険の対象者であるが、状態に応じて医療保険が優先される場合もあるということです。
このように、医療が必要な療養者でも入院せずに在宅で医療的支援を受けながら生活することができます。

訪問看護は回数や時間は決まっているの?

では次に、訪問看護は希望すればするだけ実施されるのか、決まりはあるのか?訪問看護の回数や時間について、解説致します。
医療保険と介護保険ではそれぞれ異なりますので医療保険の決まりから順番に説明していきます。

医療保険での回数・時間

医療保険では、利用者一人について、原則週3回で、1回の訪問時間は、30分~1時間30分程度となっています。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者の場合および特別訪問看護指示書が交付された場合は、週4回以上かつ、1日に2~3回の複数回訪問看護が利用できます。

介護保険での回数・時間

介護保険では、週の回数の決まりはありませんが、介護度に応じで支給される単位数の中で他の介護サービスと一緒に組み込まれるため、実際として、週1~3回となる場合が多いです。1回の訪問時間は4区分あり、具体的には、①20分未満、②30分未満、③30以上1時間未満、④1時間以上1時間30分未満です。
このように適応する保険や対象者の疾病や状態によって、利用できる訪問看護の回数や時間が異なってきます。

先ほど、医療保険での回数・時間の説明のところでできてきた「厚生労働大臣が定める疾病等の利用者」とはどのような利用者なのかは下記に示します。この通り、いわゆる難病や特別な管理が必要な状態にある方が対象となっております。
また、下記①~⑳の疾病の診断を受けている方は介護認定を受けていても、医療保険での訪問看護を利用することができます。

訪問看護まとめ

これまで、訪問看護について解説してきましたがまとめると下記の通りです。

訪問看護は、在宅にいながらも看護やリハビリを受けることができるサービスのこと。
訪問看護は、主治医が必要と判断した場合に誰でも受けることができる。
訪問看護は、医療保険と介護保険で利用することができ、原則として介護保険が優先される。
訪問看護は、医療保険・介護保険や利用者の疾病・状態に応じて利用回数や時間が異なる。

以上がざっくりとした訪問看護の解説でした。訪問看護のご利用を悩まれている方は、一度、主治医に相談していただくと説明いただけるかと思います。
また、訪問看護ステーションに直接お問い合わせていただけましたら、訪問看護導入の支援をさせていただきます。